趣のある裏路地が魅力の神楽坂に素敵なブーランジェリーがオープンしました。東京メトロ東西線 神楽坂駅1番出口より歩くこと約5分、相生坂という急な坂道をしばらく下った途中にあります。オープン初日、夕方近くでパンが残っているかどうか心配しつつも早速伺ってまいりました。
訪問日 2017年9月18日 レポーター 尾見 典子
描かれているイラストは、釜からパンを出し入れするのに便利な道具:ピール
シェフ・ブーランジェ榎本哲氏の名前に由来する店名のPhilosophesは、フランス語で「哲学、哲人」の意。そして、看板やショップカードは「榎」の葉をモチーフにするなど、シェフの思いが随所に散りばめられ、シャープで粋な雰囲気を持つブーランジェリーです。数年前から構想を練り物件を探していたところ、たまたま出会ったというこの場所は、由緒ある真清浄寺と向かい合わせという落ち着いたロケーション。近隣には、カフェや雑貨を扱う若者向けのお店が点在する興味深いスポットです。
商品はハード系のパンを中心としたラインナップ。一つ一つ丁寧に作られ並んだパンは、研ぎ澄まされたシェフのセンスが光り、眺めているだけでもうっとりとしてしまいます。おそらく焼きたてのパンの香りが坂の上の方にまで届いているのではないでしょうか。芳しい匂いに誘われ次々とお客さんが訪れます。
シェフ自慢のクロワッサンにはフランス産A.O.P(EUが規定する保護原産地呼称)発酵バターを使用、香り高い味わいが魅力です。風味が良いので購入後なるべく早めに食べるのがオススメです。口の中で余韻が長く残り幸せな気持ちになりますよ。同じ生地に有機のチョコレートを巻き込んだパン・オ・ショコラもありました。
キタノカオリ全粒粉100% バゲット・ジ・コンプレット
バゲットは三種類。トラディショナルな長時間発酵バゲット、全粒粉使用のバゲット・ジ・コンプレット(ハーフサイズあり)、湯種仕込みの長時間発酵のアルファ・バゲット。それぞれの特徴を感じながらぜひ食べ比べてみてくださいね。
しっとりもっちり高加水のリュスティックは二種類。プレーンとローストくるみ入り。
優しい焼き色で柔らかくもちもちした食感の「オリーブ・エ・フロマージュ」は塩気が効いた食欲をそそる味。アペリティフタイムにもおすすめです。中身はグリュイエールチーズ、オリーブ、タプナードですよ!なんだかアルコールの入った飲み物が欲しくなります。
スペシャリテ
ワインで仕込んだ天然酵母パン、ル・ヴィニュロン。ヴィニュロンとはフランス語でブドウを栽培してワインを作っている人の意味です。このパンを目にして、榎本氏がドミニク・サブロン統括シェフ時代に考案された「ル・ヴィニュロン」を思い浮かべた方も多いことでしょう。パン・デ・フィロゾフでは、りんご、グリーンレーズン、くるみの入った白ワインタイプのものと、イチジク、レーズン、くるみ、ピーカンナッツの入った赤ワインタイプのものとがあり、どちらも魅力的な組み合わせですので、かなり迷ってしまいます。もしもお店の作りが対面式でなかったならば、トングトレーを持ったままパン台の周りを何周もしてしまうでしょう。
Le Vigneron blanc 1/4カット ¥750(本体価格)
フィグ好きの私としましてもだいぶ迷いましたが、白ワインで仕込んだパンというのが珍しく感じ、そちらを購入してみました。外側はよく焼き込まれ、バリッとした歯ごたえで中身はもっちり、まるでアップルパイを連想するような口の中でのマリアージュ。とても味わい深く、もしかしたら薪釜で焼いたのでは?などと決してワインのせいではありませんが、あまりの美味しさにしばし酔いしれました。
こちらも感動!
アサマ山食パン。群馬県産小麦を使用し、軽井沢で生まれた長時間発酵のパン・ド・ミです。
“軽井沢で生まれた” 経緯が気になるところです。シェフとの会話の糸口に、訪れた際には是非聞いてみてくださいね。bread knifeの刃がスーッと入り、まるでブリオッシュのような滑らかな切り心地でびっくりしました。ほのかな甘みでとてもミルキー、滋味に富むクラムのダークな色味が味の深みをかきたてます。
東京の花街であり、細い小路に迷い込めば江戸の面影や昭和の佇まいがあちこちに残るこの界隈。近頃では、ウオーキングを楽しむ人が多く訪れる人気のエリアでもあります。Pain des Philosophesで美味しいパンを買った後その足でチーズ専門店のアルパージュへ。意外と至近距離!にありました。歩いて5分ほどのところでしょうか。神楽坂で最高のペアリング。ずっしり重みのあるパンとチーズで喜びもひとしお、楽しい坂道散歩となりました。
パン デ フィロゾフ
所在地 / 東京都 新宿区 東五軒町1-8
定休日 / 月曜日
営業時間 / 10:00-19:00
*レポート執筆に際しまして、広井真人様には一部画像等ご協力賜りました。この場を借りて御礼申し上げます。