農家を味わう店 ポラーノ広場 (千葉県・東金市)

2014.09.30
パンを食べた瞬間に、感じるものはパンによって必ず違う。
小麦の種類にこだわって焼くパン屋さんのパンからは素材への愛情を感じた。製法にこだわるパン屋さんのパンからは繊細さ、精巧さを感じた。作り手がどこに想いを寄せているのかはそれぞれ違う、それがパンに表現されている。だから食べ手が感じるものもパンによって異なるのだと思う。
ポラーノ広場のパンを食べると、「楽」という漢字が思い浮かんだ。
「楽しい」の「楽」でもあり、「気楽」や「楽な」の「楽」でもある。食べると体にす~っと染み込んでいくような不思議な感覚、体が「楽」にパンを受け入れていた。戸惑いと気分の高揚が同時に押し寄せ、心身ともにパンを「楽しんだ」。
多分、ポラーノ広場の一家が農業を営みながらお店を経営されていることに理由があるのだと私は思っている。
一家は千葉県東金市で野菜や果物を作っている。店はぶどう畑にあり、自家栽培の他、近隣の農家仲間の栽培した野菜・米・麦などを使って食事を作り、食事に合わせて自然酵母のパンを焼いている。
技術の進歩で天候に左右される幅は激減したものの、農業は自然と向き合う仕事だ。日々の営みの中で一家が抱く自然への畏敬と大地の恵みへの感謝が、素材をあるがままに表現したパンを作り出している。
明らかに都会の“洗練された”パンを焼くのに要求されるものとは異なる「技術力」で、ポラーノ広場では素材の持ち味を引き出し、滋味あふれるパンを焼く。
種類はほどほど、決して “洗練され”てはいないけれど、食べ手もその分あるがままの自然体で食べられる。そんな「楽」さがそこにある。
「楽」は「音楽」の「楽」でもあるのかもしれない。
私はまだ聞いたことはないのだが、ポラーノ広場の姉妹は日々の生活の中から生まれた音を紡いで曲を作り、それを唄うことによって表現する。
二足のわらじのようにも見えるが、パンも、唄も、彼女たちにとっては等しく自らの感性を表現する手段。気持ちを込めて唄うように、気持ちを込めてパンを焼く。
パンスタジアムに届くパンには、東金でいつも迎えているお客さんよりも大勢の人を「楽しませたい」という想いが詰まっているだろう。
ポラーノ広場のパンを、楽しんで欲しい。
農家を味わう店 ポラーノ広場
所在地 / 千葉県 東金市 極楽寺802
定休日 / 月曜・火曜
営業時間 / 10:30~17:30
この記事を執筆したパンライター
福地寧子( 東京都 / 女性 )
年間延べ200軒のパン屋を訪れ、1日3食・年間1095食以上を食べ続けてまもなく四半世紀。パン店勤務の時期に3Kとも言われるパン屋の仕事に情熱をもって取り組む仲間達に出会い、彼等の「想い」を伝え、この仕事に4つ目のK、「カッコイイ」を付けたいと願い活動開始。現在は講座講師、レシピ提案・商品開発、コンサルティング、記事執筆等を行う。

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