外はパリッと、中身は瑞々しくしっとり!通常のフランスパンより水分を多く含んだ“第二のフランスパン”とも言われる『パン・ド・ロデヴ』なるハードパンがあります。その魅力を多くの人たちに広めようと「パン・ド・ロデヴ普及委員会」は発足して8年目に突入、様々な支援のもと普及活動を行っています(10年間という期間限定の活動です)。去る11月東京・カネカ食品本社キッチンに於て第59回「食べて楽しむ会」が開催されました。この催しは会員ならずともどなたでも参加可能なイベントです。講師はロデヴを本国フランスから日本に持ち込み広めた仁瓶利夫氏(ラトリエ・ドゥブテイユ)自身が作るロデヴを直接いただける大変貴重な機会で「食」にまつわるミニセミナーも行われる願ってもない企画、大勢のロデヴファンの熱気に包まれ、会が始まりました。
開催日 2019年11月26日 レポーター 尾見典子
会場となったカネカ食品では、午前中に「技術講習会」が行われておりその時作ったロデヴやリュスティック、バゲットなどが次々と焼成され香ばしく良い匂いに包まれていました。そして今回、仁瓶氏のパンに合わせ会にご協賛くださっている京都「リンデンバーム」吉田シェフよるテリーヌやプル・ド・ポークが届き、当日の盛り付けや前菜などお料理を作ってくださったのは、カネカ食品のスタッフと〈食べるよ会員〉のエドガー朋美さん。鳴門金時のポタージュスープ、チーズの盛り合わせ、オリーブ、野菜のグリルなど色とりどりのオードブルが用意され参加者は各々好きなように皿に取り分けました。まずはスパークリングで乾杯!パンもお料理もおかわり自由、同じテーブルについた初めましての方々ともすぐに打ち解け美味しいパン談義に花が咲きました。
北海道興部町 チーズ工房(有)アドナイ フロマージュ・ド・エールなど
パンとはこういうもの、と教えてくれている 食事パンの数々
パンは6種類。バゲット、リュスティック(プレーン、アプリコットとくるみ)、パン・ド・ロデヴ(プレーン、サルタナとくるみ)、少量のルヴァン。早朝から仕込みをしてくださったエドガー朋美さんよりお料理の説明がありその後仁瓶氏よりメインディッシュである石窯・鍋料理「ベッコフ」のご紹介がありました。
各テーブルに配られるタイミングで主催者の松成さんからこの日のベッコフは豚肉・牛肉・羊肉が同じ割合で入っている事、それらをソテーしてマリネしたものとジャガイモとニンジンを加えていること、様々な支援がこの会を盛り上げている事に感謝の意を表していらっしゃいました。
仁瓶氏の思い出 ベッコフというお料理
左から 仁瓶利夫氏、エドガー朋美さん、カネカ食品ブーランジェ山﨑隆二氏
ベッコフは、パン生地で目張りをして窯で2、3時間煮込んだものでアルザスのスペシャリテです。ベッコフっていろんな言い方があるかもしれないけれど要は窯の中、オーブンの中にいれるという意味をもつ冬ならではの料理です。羊肉などをアルザス名産の白ワインで煮込むっていう、当時アルザスに関わるシェフとかM.O.Fとかに何回も招待されてご馳走になったものですが自分にとってはとても懐かしい郷土料理です。ほら、これいい匂いするでしょう!と仁瓶氏。
昔石窯の時代からパン屋の近隣のお客様は窯が空く時間をわきまえていて、マダムたちが自宅で仕込んだ鍋を持って行ってパン屋はそれらを窯に突っ込む、そして2、3時間後にまたマダムたちが取りに行く、石窯は余熱があるのでそういう料理が得意なわけです。わざわざ家で火を焚かなくても村の共有財産であるパン屋の石窯を村の住民たちも利用していた、そういう料理の名残なんです。だからパン生地で目張りをしているんです。仁瓶氏自らが現地で見聞きしたり体験したことを語り部のような口調で話される事柄はとても興味深く、ついつい内容に引き込まれ目の前の料理と合わせ愉しく美味しい時間を過ごしました。
カネカ食品(株)市場開発統括部 村田氏より魅力的な商品のお話がありました
会の後半は「パンのよもやま話」というテーマで私たち消費者目線に立ったパン全般のお話と、会場を提供してくださったカネカ食品さんから新製品「ベルギーヨーグルト ピュアナチュール」と「パン好きの牛乳」「パン好きのカフェオレ」各200mlパックのご紹介がありそれら3種が参加者の皆に配られました。また、ミニセミナーの間に山﨑シェフが準備してくださった焼き立てパンもたくさん沢山たーくさん!両手が塞がるくらいのお土産をいただき、お腹いっぱい頭も心も大満足で盛況のうちに会はお開きとなりました。
ミニセミナーの中で
ブラックユーモア満載のミニセミナー 仁瓶氏だから話せる!
『酒には十の徳あり』酒には十の長所があって良いことがあるよという意味で、その長所とは百薬の長、寿命を伸ばす、旅に食あり、寒さを凌げ、持ち歩きに便利で、身分に関係なく貴人と交際できる、愁いを払い、苦労を癒す、誰とでも仲良くできる、独居の友となる、の十個ですが仁瓶氏はそれをパンに置き換えてセミナーがスタートしました。結局十のうちいくら考えても八個しか思いつかなかったと会場の笑いを誘っていましたが「パンに八徳あり」身体に良い美味しいパンをきちんと食べれば憂いも忘れるし、パンを仲立ちとして和気藹々と皆で食事を共にする、ちゃんとしたシンプルな食事パンをしっかりと食べれば脳への刺激もあるし...高齢化社会において長生きすることの是非が問われるところではありますが...色々な方と縁を結び人寿を延ぶ、メディアに惑わされず自分の確かな眼を持って豊かなパンライフを送って欲しい、と限られた時間内でどこまで伝わるかなあと心配しながらも実例をあげながら思いを語ってくださいました。
パン・ド・ロデヴ普及委員会 今後の予定
「パンドロデヴ普及委員会」は発足当初から10年の期限を設け活動を続けています。来年はロデヴを訪ねるフランスへの旅(5月〜6月頃を予定)の企画があり、また仁瓶氏はロデヴに合う和風の出汁をテーマに研究を続けていてその成果を発表したいとも考えているそうでそこも注目です。次回は2020年2月に横浜・徳多朗において徳永久美子氏による「食べて楽しむ会」が開催されるそうです。会期が終了する2022年には今よりさらにパン・ド・ロデヴが世の中に普及していますよう皆さまもぜひ応援してください!
《パンドロデヴ普及委員会公式ホームページ》
http://lodevepain.org