名品「エクセルブラン」のはじまり
「サンジェルマン」は、首都圏の百貨店、駅ビルなどを中心に全国65店舗展開し、幅広い世代に長年愛されている名店。おそらく首都圏に住むパン好きにとっては、生まれたころから食べているとても身近な存在だろう。
同店1号店がオープンしたのは、1970年10月、東急百貨店本店7階(現在「サンジェルマン」は閉店)。食パン「エクセルブラン」はオープン当初から棚に並ぶ看板商品だ。
当時の人々は、それまでの食パンとは違う風味、食感に驚き、心地よい塩味と、ひきのある食感の「エクセルブラン」に魅了された。
その頃の東京はというと、兵庫の「ドンク」(1966年オープン)、広島の「アンデルセン」(1970年オープン)が、渋谷に近い青山にすでに出店しており、第1次高級パンブームが訪れていた。
地下鉄銀座線の車内では、多くの女性が人気パン屋の袋を嬉しそうに抱えている姿がみられ、筆者の母もその中の一人だった。母は、週3回渋谷で習い事のあった私を連れてよく「しぶちかサンジェルマン」(現在、閉店)に通っていた。
(※「しぶちか」とは、渋谷駅につながる賑わいのある地下街。スクランブル交差点の真下にあたる。)
当時、母が必ず買っていたのは「エクセルブラン」と「マヨナンロール」。今回の執筆にあたり80歳になる母に話を聞いたところ、当時「マヨナンロールは1個60円だった」とのこと。
50年以上変わらない味でロングセラー
「エクセルブラン」は、小麦、水、少量の砂糖、塩、イーストという、フランスパンに近いシンプルな材料で作られている。これは発売当初からのレシピをずっと守っているそう。
味わいとしては、小麦の風味がしっかりと感じられるのが特徴。そのため同店では、大手製粉会社に「エクセルブラン」専用のオリジナルブレンド小麦を特別発注している。
ロングセラーの「マヨナンロール」も実はエクセルブラン生地
創業当時からあるロングセラー商品「マヨナンロール」
「エクセルブラン」のパン生地を使ったパンに、「マヨナンロール」と「ブランドーナツ」がある。どちらも定番の人気商品で、小麦のおいしさがしっかりあるエクセルブラン生地は、惣菜パンとしても、菓子パンとしても多くのお客様から支持されているようだ。
また、店内で販売されているサンドイッチにも「エクセルブラン」が使われている。心地よい食感と程よい塩味は、具の味わいを引き立てるため、ハムや野菜などとの相性が良い。
今年リニューアルしたカレーパンにも注目
「エクセルブラン」以外にもぜひ筆者がおすすめしたいのが「シェフのカレーパン」だ。
「シェフのカレーパン」は、「カレーパングランプリ」で3年連続金賞受賞したこともあり、同店の大人気商品となっていたが、今年満を持してリニューアルしている。
従来のものよりも、野菜のうまみが増し深みのある濃厚なカレーに変更となった。
家で食べるときは、レンジで20秒ほどチンしてから、1分~1分半程度トーストして食べるのがおすすめ。このひと手間で、中まで熱々、外はサクサクの最高のカレーパンが楽しめる。ぜひお試しあれ。
「サンジェルマン」のアウトレットショップ「ブレッドボックス」
同店では、食品ロスを減らすため「ブレッドボックス」というアウトレットブランドを神奈川、東京などに7店舗展開している。
各店舗や工場での商品廃棄をなるべく減らそうと、前日のパンなどを集め「ブレッドボックス」の店舗で積極的に販売している。
同店としては、長年この食品ロス問題に前向きに取り組んできたが、あまり大きくは公表してこなかったそうだ。しかし、近年、SDGsに対する消費者の理解が深まったことで、「ブレッドボックス」の活動に注目が集まることが多くなったそう。
アウトレット品のため並ぶ商品は日によって変わるが、「サンジェルマン」の様々なパンが格安で購入できる。
「エクセルブラン」を改めて食べる
今回取材をとおし、いまの競走厳しいパン業界で同店が長年支持されている訳を、名品「エクセルブラン」の中から感じとることができた。
様々な立場の社員数名の方とお話させていただいたが、共通して「非常にシンプルな味だからこそ何も変えずに守っています。」ときっぱり。その言葉には重みがあった。
この記事を読んだ人達には、ぜひあらためて「エクセルブラン」を食べていただきたい。50年前の人たちの感動と、いまも味を守っている人々の思いがその中にきっと感じられると思う。
冷蔵コーナーで「パン好きの牛乳」発見!
同店では、パン好きお気に入りの「パン好きの牛乳」を買うことができる。(一部店舗を除く)
ミルクのおいしさがしっかりと感じられるのに後味すっきりが特徴。パンとの相性が良いので、パンランチのお供におすすめしたい。
※今回の取材は、「サンジェルマン エトモ市が尾店」にておこなった。記事内で紹介しているパン等についての質問は各店舗にお問い合わせください。