1.講座 「12月 クリスマスパン」
※2013年12月によみうりカルチャーで行ったパン講座の内容をそのまま記事にしました。
日時:2013年12月21日(土)13:00~15:00
場所:よみうりカルチャー恵比寿
2.12月のパン屋
11月末頃からパン屋では粉砂糖で着飾ったもの、ドライフルーツやナッツがたっぷり入ったものなどクリスマスらしいパンやお菓子がいろいろと並び始めます。
「ベラベッカ」「パンドーロ」など聞きなれない名前のパンたちを見ると、一体どんなパンなのかと興味深々、ワクワクしますよね。
今回の「12月 クリスマスパン」の会は、世界のクリスマスパンについて学びながら、ちょっとづつ食べてみようというのが目的です。クリスマス・イブに家族でイチゴケーキを食べたり、恋人同士がロマンティックに過ごす日本のクリスマスとは違う、世界のクリスマスの過ごし方にもすこし触れてみたいと思います。
3.今回用意したパン、その他
・イタリア ロイゾン社75周年記念 「パネットーネ」
・世田谷 スドウ 「和三盆シュトレン」
・世田谷 スドウ 「シュトレン」
・池尻 トロパントウキョウ 「シュトレン」
・赤坂 ノイエス 「赤シュトレン」
・恵比寿 ドンク 「パンドーロ」
・恵比寿 ドンク 「ベラベッカ」
・千葉 ツオップ 「ダイフェカーター」
・千葉 ツオップ 「スペキュロス」
・尾山台 ヴァンドリュド 「パンデビス」
・新宿 エディアール 「マナラ」 「ルッセカット」
・横浜 イケア 「グロック」
4.クリスマスカレンダー
クリスマスは12月25日に行われるカトリック教の宗教行事です。整理すると以下のとおりです。
① 【アドベント 待降節】 11月30日に近い日曜日から
② 【聖ニコラの日】 12月6日
③ 【聖ルチア祭】12月13日
④ 【クリスマス・イブ】12月24日の夜
⑤ 【クリスマス 降誕日】12月25日
⑥ 【降誕節】12月25月~
⑦ 【エピファニー 公現祭】1月6日
どの日にどんなお祝いをするか、何を食べるかも国ごと様々です。キリスト教が普及する以前からの風習や習慣、伝説と混じたものが多く、冬至の時期の昔からの風習とキリスト教が合わさって現在にいたるようです。
【アドベント 待降節】
アドベントとは「到来」という意味で、ドイツなどヨーロッパのカトリック教徒たちは12月25日の4週間前の日曜日からアドベント(待降節)に入ります。4回の日曜日を過ごしながらキリストの降誕を厳粛な気持ちで待ち望む期間です。もちろん子供たちはどきどきしながらプレゼントやご馳走を待ち望む期間です。
【聖ニコラの日】 12月6日
サンタクロース、つまりセントニコラの祭日です。
オランダ、ドイツではこの日が祝日で、地域によっては盛大なお祭りが行われる日です。オランダやドイツの一部地域ではこの日に、プレゼントをもらったり、贈ったりするそうです。聖ニコラは実在の人物で、貧しい人に金貨を与えたといわれています。その投げ入れた金貨がたまたま靴下の中にはいったのが、クリスマスに靴下を下げる原形といわれいます。
【クリスマスイブ 降誕祭】
クリスマスイブとは、クリスマスが「キリストのミサ」、「イブ」がイブニングの意味で「クリスマスの夜」という意味です。(前夜祭という意味ではありません。)
キリスト教では日没から日付が変わるという考え方をしていて、12月24日夜から25日までを「クリスマス」と考えます。そして星の見える夜にイエス・キリストが生まれたと聖書にあるので「クリスマスイブ(聖なる夜)」に降誕のお祝いをします。
サンタクロースが12月24日の夜にプレゼントを配るスタイルは、19世紀後半にアメリカでまれ映画などを通し世界中に広まったものだそうです。
【エピファニー 公現祭】1月6日
ヨーロッパでは1月6日までクリスマスの飾りを出し、クリスマス期間とします。「エピファニー 公現祭」といい、3人の学者が星をおってキリストの誕生にお祝いを告げに来た日とされています。12月24日よりも、エピファニーのほうを盛大にお祝いする国や地域も多いようです。フランス、イタリア、スペインではこの日にプレゼントをもらいます。
【ユール】
最近良く耳にする「ユール」の意味は、北欧のクリスマスの呼び方です。北欧では昔からこの時期に「ユール」といい、妖精たちのお祭りだったそうです。そこにキリスト教が交じり合いいつのまにか「ユール」がクリスマスの意味に変化したそうです。いまでも北欧ではクリスマスといえば妖精(ニッチェ)が定番です。
というように、国によってお祝いする日も期間も様々です。
5.国ごとのクリスマスパン
【ドイツ】
アドベントから「シュトレン」を食べ始めます。毎週日曜日に薄くスライスしクリスマスまで少しずつ食べます。形については、キリストがおくるみに包まれた形だとか、キリストの枕の形などいろいろな説があるそうです。
ドライフルーツやマジパン、ナッツが入ったものや、ケシの餡を巻いたものなどいろいろな種類があり、お店や地域ごとに個性溢れる「シュトレン」があります。表面に粉砂糖がたっぷりまぶしてあり白いのが特徴で、発祥地はドレスデンです。
【イタリア】
クリスマスといえば、「パンドーロ」と「パネットーネ」が有名。「パネットーネ」は「大きなパン」という意味で、子牛の腸から採る「パネットーネ菌」をつかうことで独特な香りをまとっています。オレンジピールやレーズンなどのドライフルーツを入れふんわりとしたパンです。長期保存ができるのでクリスマスの時期に親戚同士で自分のお気に入りを贈りあうそうです。
「パンドーロ」は「金のパン」という意味で、卵黄をたっぷりといれ黄色いリッチな生地が特徴。粉砂糖をかけて食べます。
【フランス】
「クグロフ」 クリスマスだけでなく一年中食べられているアルザス地方の伝統的なパン。王冠のような形からお祝いごとなどに登場する。
「マナラ」 12月6日の聖ニコラ祭で食べられる人型のパン。
「パンデビス」 デビスとはスパイスのこと。クリスマスに食べるスパイス入りのパン。
「ベラベッカ」 洋ナシのパンとも呼ばれるアルザス地方のパン。生地のほとんどがドライフルーツやナッツ、濃厚な味が特徴。
「ガレット・デ・ロワ(galette des rois王様のお菓子)」1月6日の公現祭に食べます。
【ベルギー】
「スペキュロス」 12月6日に食べる聖ニコラの形のジンジャークッキー。
「ダイフェカーター」 400年前のクリスマスに食べられていたパンを「ツオップ」が再現
【スウェーデン】
「ルッセカット」 北欧のクリスマスは12月13日の「聖ルチア祭」から始まります。この日に食べるのがこのパン。サフランの黄色い色が特徴のパン。レーズンの飾りも必須。
最後に
クリスマスのパンやお菓子には、ジンジャー、アニス、シナモン、カルダモンなどのたくさんのスパイスが使われているのは、体を温めるため、健康祈願、魔よけなどの意味があります。
今回はなるべく多くの種類のクリスマスパンを楽しめるように用意いたしました。事前アンケートでは「シュトレン」が食べたいという意見が多かったので、「シュトレン」のみ数店舗用意し食べ比べ形式をとりました。
クリスマスのパンは、パン職人たちがヨーロッパでの修行時代の記憶と強く結びつく、思い入れの強いパンのように感じます。その思いの詰まったパンたちをみんなでシェアすることができ貴重な会になりました。
最後に、「クリスマス」という呼び方も国ごとに様々なのでまとめておきます。
・北欧 ユール
・フランス ノエル
・イタリア ナターレ
・ドイツ ヴァイナハテン
・スペイン ナビダー
※今回、パンとは関係ない話も多いですが、講座用に私が調べたり、まとめた資料を色々と載せてあります。パンだけでなくクリスマスについて知りたい方にもお役に立てる情報もあると思い残しました、ご了承下さい。